トミー・ジョン手術、育成落ちを糧に
セ・リーグ DeNA6―4ヤクルト ( 2026年7月5日 神宮 )
4月の今季初登板から数えて4戦目。ついにその瞬間が訪れました!
横浜DeNAベイスターズの深沢凰介投手が、5回2安打無失点という圧巻のピッチングを披露。
救援陣へ見事なバトンを繋ぎ、念願のプロ初勝利を挙げました。
マウンドで見せた力強い表情から一転、試合後に初勝利のウイニングボールをしっかりと握りしめた苦労人は、万感の思いを言葉に滲ませました。
「ケガも経験して凄く長く感じたけど、絶対に1軍で活躍してやると気持ちでやってきた。凄くうれしい」
■ 初回から全開のロケットスタート!最速147キロのサイド右腕がテンポで圧倒
「先のことは考えない」と覚悟を決めて上がった神宮のマウンド。
深沢投手は初回からアクセル全開で飛ばしていきました。
持ち前の精密なコントロールに加え、この日一際目を引いたのが、独特のサイドスローから投げ込まれるストレートの圧倒的な球威です。
自己最速クラスとなる147キロを計測した直球を軸に、相手打線の内角を果敢に急襲。
5回を投げてわずか2安打、スコアボードに「0」を並べ続ける快投でゲームメイクの役割を完璧に遂行しました。
「直球で押せている場面もあったのが成長。テンポよく投げられた」と本人も語る通り、結果・内容ともに大きな自信を深める最高のマウンドとなりました。
■ 名伯楽・小谷正勝氏も惚れ込んだ潜在能力。専大松戸時代からの進化
専大松戸高(千葉)時代には、3年時に春夏連続で甲子園の土を踏んだ深沢投手。
高校在学中に彼へ横手投げ(サイドスロー)への転向を助言し、その才能を開花させた名将・持丸修一監督は、「あれだけ低めにスピードボールを投げられる高校生はなかなかいない」と当時からその非凡なセンスを絶賛していました。
その高いポテンシャルは、プロのレジェンドの目にも留まっていました。
國學院大の3学年先輩であり、DeNA入団時にコーチングアドバイザーを務めていたあの名伯楽・小谷正勝氏(元巨人・中日など投手コーチ)が、巨人時代に内海哲也氏らを育て上げた鋭い眼識で「なかなかいいもん持ってるぞ」と周囲に連絡を入れていたというエピソードが残されているほどです。
■ トミー・ジョン手術と育成契約。大卒ルーキーへの悔しさをエネルギーに変えて
順風満帆に見えたプロ生活でしたが、大きな試練が彼を襲います。
プロ3年目となった2024年3月、右肘内側側副靭帯再建術(通称トミー・ジョン手術)を敢行。
一時は支配下登録を外れ、育成契約に切り替わるというプロの厳しさを味わいました。
そこから過酷で地道なリハビリを黙々とこなし、2025年のオフに執念の支配下復帰。並々ならぬ覚悟で迎えた5年目の今シーズン。
今年、大学を卒業して入団してきた大卒の新人たちとは、2003年生まれの同い年になります。
5月には、ドラフト2位ルーキーの島田投手がチーム内で一足先にプロ初勝利をマーク。
「(先に勝たれて)悔しい思いはあった」と本音を隠しませんでしたが、その苦しいリハビリの時間とライバルへの悔しさこそが、深沢投手を一回りも二回りもタフな右腕へと成長させる最高のエネルギーとなりました。
チームのAクラス入り、そして上位猛追への起爆剤となる大きな1勝。
苦労人が踏み出したこの一歩は、ベイスターズの未来を照らす確かな光となります。
【編集後記:『サイドから常時140キロ中盤』の希少価値。深沢が潜り抜けたトンネルの先に見える景色】
ベイスターズファンの皆様、そして深沢投手、悲願のプロ初勝利本当におめでとうございます!
ウイニングボールを見つめる表情を見ただけで、スコアラー目線としても胸が熱くなるものがありました。
深沢投手のピッチングを紐解くと、やはりトミー・ジョン手術を経て「サイドスローから最速147キロ」まで出力が戻り、かつ球威が上がっている点に驚かされます。
一般的にサイドハンドの投手はキレや変化球のコンビネーションで勝負するタイプが多く、ストレートの平均球速は130キロ台後半から140キロ前半に落ち着くケースが大半です。
しかし、今の深沢投手は低めの強いストレートで打者のバットを押し込めている。
これがあるからこそ、テンポ良くバッターを追い込み、術前よりも圧倒的に優位なカウントを作ることができています。あの小谷正勝氏が早くから惚れ込んでいたというのも合点がいくクオリティです。
リハビリ中に同世代の大学野球の動向や、入ってきたドラ2・島田投手の活躍を見て、どれほどの焦りと悔しさがあったかは想像に難くありません。
しかし、大卒1年目の選手たちがプロの壁に当たっている中で、すでにプロの環境で肉体を作り直し、術後の強靭な肘を手に入れた深沢投手の「5年目のアドバンテージ」は非常に大きいです。
先発ローテーションの救世主として、ここからさらに勝星を積み重ねてくれるのか。
ベイスターズの反撃のキーマンとして、虎渓三笑TVでもその熱いカムバックストーリーをどこよりも深く追いかけていきます!
◇深沢 鳳介(ふかざわ・おうすけ)
2003年(平15)11月5日生まれ、東京都出身の22歳。
千葉・専大松戸では3年時に春夏連続甲子園出場。
21年ドラフト5位でDeNA入団。
24年3月に右肘手術を受け、シーズン終了後に育成契約。
25年11月に支配下選手に復帰した。
今季4月7日の中日戦でプロ初登板。1メートル77、74キロ。右投げ右打ち。








