社会人野球日本選手権 準決勝 ヤマハ6―3NTT東日本 ( 2025年11月11日 京セラD )
追い求めてきた理想の打球で、激戦に終止符を打った。3―3の9回。2死二、三塁の勝ち越し機で、4番・網谷圭将に打席が回ってきた。初球から内角へのツーシームが2球続き、カウントは1ボール1ストライク。3球目、三たび、内寄りに来た138キロを振り抜くと、ライナー性で左中間スタンドへ突き刺さる勝ち越しの決勝3ランとなった。
「多田投手の傾向はみたいなものはある程度、頭に入っていましたし、終盤でしたので、内角に突っ込んでくるイメージはありました。2球目にファウルした際に、なんとなく捉えられるイメージもあった。ホームランという百点満点の結果で、左中間へほぼライナー。何も言うことはない打席になったと思います」
DeNA育成を経て、今季が入社7年目。昨年まで2年連続で外野部門のベストナインに輝いたが、現状に甘んじることなく、一歩上を目指してきた。
「現状維持は衰退がモットー。常に新たな挑戦を心がけています。その上で技術的には感性を大切にしていますが、感性を優先しすぎた故に今年は深みのない打撃をしてしまった部分もあると思います」
昨年の終盤から、今年の夏前までは苦しんだ。全国クラスの150キロ台の直球に対応するべく、従来は右肩の前にあったトップの位置を投手寄りへ修正。無駄のないコンパクトなスイングを目指したが、「早くバットを出そうとするあまり、ボールとの距離が取れず、逆に詰まるようになった」という弊害が生まれた。都市対抗東海2次予選も苦戦。開幕からの6試合で5安打と精彩を欠いたが、予選期間中も早朝から特打を継続することで本来の姿を取り戻そうとした。その甲斐あって、東邦ガスとの第5代表決定戦ではソロ本塁打を含む3安打2打点。主軸としての役割を果たすとともに、その先にある2大大会に向けて復調のきっかけをつかんだ。
そんな網谷にとって、理想とする打球は「右中間、左中間へのライナー。打球角度で言えば14度ぐらい」。NTT東日本戦の9回に放った一発こそが、今季の集大成でもあった。網谷は言う。
「あまり気持ち(で打った)とか言いたくないのですが、例えば状態が悪いからダメだとネガティブになるのではなく、それでもあがき続ける。ちょっとの差ですけど、全然違うと思う。感覚やコンディションを良くするというのは大前提にありますが、1年を通すと、そういう日の方が少ない。日本選手権も数字(打率・286、1本塁打、5打点)だけ見ればそこそこやれたかなと思いますが、それこそ、もがき続けていました。ただ単に気持ちで打ったのではなく、いま言った意味合いを元にもがき、あがき続けた末のホームランだったと思います」
日本選手権終了後から3日後には自主トレを再開。チームのオフ期間を利用して、20日には大阪市内にあるトレーニング施設で汗を流していた。「体の仕組みであるとか、いろんなことを学ぶことができました」。8大会ぶりの日本一を成し遂げても、視線はすでに来季を見据える。卓越した技術、理論もさることながら、野球と真摯に向き合う姿を慕う後輩は多い。網谷圭将、28歳。その生き様もまた、ヤマハの強力打線を支えている。








